2013年10月15日火曜日

村田裕之 リタイア・モラトリアム

2007 日本経済出版社

2007年には、団塊世代が60歳になり、停年退職するので、大量のベテラン社員が企業からいなくなり、彼らのノウハウ・技術が消えてしまうため、企業体力が低下すると言われていた。
ところが、実際にはそれほど問題にはならなかった。
彼らの多くが、再び同じ企業で再雇用されたからである。
そのかわり、新しい問題がでてきた。
停年後に再雇用されると、役職をはずされ、給料は大幅に下がり、閑職に回され、年下の上司のもとで働くことになる。不満を持った年配社員が多くなると、若手社員にとっても、職場は居心地のよくない環境になってしまいがちである。
これが、「リタイア・モラトリアム」という問題である。
停年が65歳にまで延長されたとしても、中身は変わらない。
むかしは、高齢者は徐々に衰えていくと考えられていたが、そうではないことがわかってきた。
65歳は、まだまだ元気で、能力も衰えていない。
停年になって、組織の束縛から解放され、親も亡くなって介護の心配もなくなる。さらに、子供も独立して家から出て行った。こういうことが重なると、気分は解放され、吹っ切れた気持ちになる。いままで、抑圧されていた感情が解き放たれ、はたから見ると、その人の前半生からは想像もできない大胆な行動をとる人も少なくない。
人生の先を見れば、残りは限られている。
「いまやるしかない」「それがどうした」「もう、いいじゃないか」というような気持ちを伴った行動が、しばしば見られるようになる。
このような行動は、たんなる思い付きや、一時的なストレスによるものというよりは、人生には、そうした行動を起こしやすくする時期があるのだと考えられている。

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