2011年5月6日金曜日

中村隆英 昭和経済史

1986 株式会社岩波書店

1925年生まれ

東京電力は、戦時中の国家統制時代を経由して、戦後できた会社である。
東日本大震災による原子力発電所の事故により、東京電力には、巨額の賠償責任が生じている。
巨額の賠償を、一民間企業だけでまかなえるのか、また、国の政策として原子力発電が推進され、許可されたのだから、企業の経営責任だけの問題ではないのではないか。

今の電力会社は、戦時中に国家総動員法により、電力が国家によって管理されるようになったことに始まる。
戦前には、多くの電力会社があって競争していたが、国全体として電力業が統制となり、各電力会社の持っている発電設備、発電所と長距離送電線を、日本発送電という一社が経営して、電力会社はそれを地方で配電するだけとなった。
さらに、昭和16年になると、個々の電力会社は全部解散させられ、地域別の配電会社がつくられた。

戦後、日本発送電は解散し、当時の配電会社が、地域別の電力会社となり、発電、送電設備まで持って、現在のような東京電力や関西電力などの九電力会社になった。

このように、今の電力会社は戦争当時の政策によってできたもので、民間企業ではあるが、独占企業で、役所との結びつきが強く、役人の天下り先になっていた。

原子力発電所の事故が起きるまえは、東京電力は、巨額の広告費を使って、原子力発電は環境にやさしいクリーンエネルギーであることをアピールし、「オール電化」は庶民のあこがれで、東京電力のイメージは非常に良いものであった。

しかし、これからもこのままで、続けていかなければならないというわけではない。
太陽光発電、バイオマス発電といった小規模な発電を自由化すれば、地方での投資も生れ、電力の供給が増えることが見込まれる。
原子力発電所の事故による賠償負担のために、同じ電気なのに、東京電力だけ値上げになったり、計画停電になったりというのも、利用者にとっては、納得できにくい。送電は全国を統一したほうがいいという意見もある。

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