2010年11月6日土曜日

折口信夫 神道の新しい方向

1999 加藤典洋編 日本の名随筆 昭和Ⅱ 株式会社作品社

1887~1953 国文学者・歌人

「昭和二十年の夏のことでした。
まさか、終戦のみじめな事実が、日々刻々に近寄ってゐようとは考へもつきませんでしたが、その或日、ふっと或啓示が胸に浮かんで来るような気持ちがして、愕然と致しました。それは、あめりかの青年たちがひょっとすると、あのえるされむを回復するためにあれだけの努力を費した、十字軍における彼らの祖先の情熱をもつて、この戦争に努力してゐるのではなからうか、もしさうだつたら、われわれは、この戦争に勝ち目があるだらうかといふ、静かな反省が起つて来ました。」(p11)(1946年の話)

そして、著者は、日本の国に、果たしてそれだけの宗教的情熱を持った若者がいるだろうかと考え、不安でならなかった。
日本の敗色が、日に日に濃くなっていくなかで、著者は、アメリカ人の宗教的情熱のほうが、日本人のそれより強いのではないかと思い到って愕然としたのであろう。
私は神道の教義については浅薄な知識しか持っていないが、日本だけが「神」によって守られているわけはなく、ましてや、「神風」が吹くはずもない。
他方では、イスラム教徒やキリスト教徒は、民俗も国も超えて、しつこく終わりのない戦いをしつづけてきた。
日本人は、宗教心が足りないと言う人もいるが、宗教が争いの原因にならないのであれば、むしろ好ましいことである。

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