2010年4月23日金曜日

谷川浩司 集中力

2000 株式会社角川書店

1962年生まれ

将棋の勝負は、人生にたとえられることがある。
著者は、将棋の勝負が、ただ勝つためだけのゲームになってしまったら寂しいと言う。将棋ファンも、そこに人間と人間がぶつかるドラマがあるから将棋を見てくれる。
大事なのは、如何に戦ったかである。「如何に」の中身は創造性であり、「戦ったか」の意味するものは気迫である。
将棋のプロとしてトップクラスに居続けるために必要なのは、勝負への気迫である。
勝負への気迫を支えるために大切なのが、集中力、思考力、記憶力、気力である。
これらの力が大事なのは、将棋の世界だけではない。

将棋のプロは、十代の頃は、将棋漬けの毎日を送っている。いかに将棋に集中できるかが重要である。好きなことをやっている時間は、それほどつらいとも思わないものである。対局においても、集中力を高め、維持していくための工夫をしている。

思考力は、勝負を分ける鍵になる。ただ時間を費やして考えているだけでは意味がない。結果を出さなければ、時間の無駄遣いでしかない。将棋に限らず、「ああでもない、こうでもない」と迷うのではなく、理屈や言葉で了解する前に、「ピンとくる」「なんとなくわかる」と感じられるように思考力を養うことが重要である。

記憶であるが、良いアイデアは豊富な知識や材料となる情報があって初めて可能になる。つまり、想像力やアイデアの源は、頭のなかの記憶の組み合わせから生まれる。記憶がしっかりしていなければ、良いアイデアが閃くこともない。そのためには、身体に染み込むまで繰り返し練習するしか上達の道はない。

将棋で勝つための心構えでもっとも大事なことは「あせらない、あきらめない」である。目標を決めたら、焦らず、あきらめず、最後までやり抜く気力を持ちつづけることが重要である。
将棋の世界では、つねに勝ち続けることはできない。負けても、立ち直って次に挑戦できる気力を養わねばならない。気分転換や頭の切り替えで、新たな気力を呼び起こすことも必要である。
「将棋に限らず、ある程度実績を残した人が『これだけ頑張ってきたのだから、もうそろそろいいのじゃないか』と思いだすと、勢いを失い、第一線で活躍できなくなってしまうものである。自分の子どもや孫のような年齢の棋士を相手に、持ち時間を使い切って頑張る気力がないと、勝負に対する気迫は萎えてしまう。」(p182)
著者は、好奇心をもち、気力を失わなければ、何歳になっても生き生きとしていられるはずであると考えている。

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