2010年3月7日日曜日

田辺和俊 ゼロから学ぶリスク論

2005 株式会社日本評論社

1941年生まれ

現代は、「リスクの時代」である。
この本は、リスクやリスク管理についての知識を整理したものである。
リスクは、日本語では危険と訳されるが、多少意味が違い、危険という言葉は、安全と対立する概念であるが、リスクという言葉には危険の程度といった確率的な概念が含まれている。また、リスクには、「リスクをとる」という言葉に表れるように「恐れずに試みる」という意味で使われることもある。
本書では、リスクを次のように定義している。
リスク=損害規模×発生頻度
このようにして、様々なリスクを比較することにより、たとえば企業は、リスク対策に優先順位をつけることができる。
それでも、企業がさらされているリスクは、非常に多く、すべてに対応することは、きわめて難しい。
アメリカの企業では、リスク管理部門が重要な位置を占めている。国際的な標準化・規格化を進めているISOでも、リスク管理の規格化が検討されている。
日本でも、リスク管理のJIS規格が作成された。
リスクの分類方法のひとつに純粋リスクと投機的リスクに分ける方法がある。
自然災害・火災・交通事故などのように損害のみ発生させるリスクを純粋リスクといい、統計的に予測可能なので保険が可能である。
一方、為替や株価の変動のように、損害または利得をもたらすリスクを投機的リスクといい予測不可能である。
近頃起きた大事件・大事故は、ほどんどすべて「リスク」という言葉が関わってくる。
著者は、リスクとリスク管理を研究する学問を「リスク学」と名付けた。情報学や環境学と同様、既成の様々な学問分野にまたがってくる「リスク学」は、まだまだこれからの発展が期待される。

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