2010年2月11日木曜日

斎藤ヒサ子監修 面白いほどよくわかる官庁&官僚のすべて

2008 日本文芸社

日本という国は、どのようなしくみでできていて、どのように機能しているのか。
政治や行政のことになると、マスメディアで時々刻々伝えられているが、ほとんど断片的で、 複雑なしくみを伝えきれているとは言えない。
官僚という言葉であるが、官僚と呼ばれるのは一般の公務員のことではなく、 中央官庁で働く一定以上のポストにある者のことである。
日本の官僚は、明治以来、権力の中枢にあって、実質的に国の方向性を決めてきた。 選挙によって選出される議員で構成される内閣は、総理大臣が変わるごとに変更になる。
その内閣を、裏で支え、日本の行く先をはっきりと定め、安定した行政というものに、高邁な精神で取り組んできたのが官僚ではなかったかというのが本書の序文である。

官僚になるには、一種国家公務員試験という難関試験に合格しなければならない。
この試験は人事院が実施する。これに合格したうえに、さらに中央官庁の面接をパスしなければならない。 ここで、エリート官庁といわれるところでは、あらかじめ東大や京大卒の先輩が上位合格者の後輩を勧誘しているらしい。
そんなわけで、他の大学の出身者は、エリート官庁には、ほとんど入れない。
キャリア官僚になると、文字どおり24時間、役所のために身を粉にして働かなくてはならない。
審議官・局長・次官というトップクラスまで行くのは、ごく少数であるが、課長までいけば「天下り」で高額の所得が保証される。
このような、キャリアとノンキャリアの区別が終始つきまとううえに、四六時中、組織べったりの公務員の世界は、 ストレスと不満が鬱積している。
そのため、たとえ下級の公務員でも、それなりに優遇されるようになっている。
たとえば、国税庁や税務署のような、財務省の下位の役所でも、民間に対しては絶大な権力をふるっている。 長年勤務すれば、税理士という超難関資格が無試験で取得できる。 さらに、長いあいだ公務員を勤めれば、歳をとってから勲章までもらえる。
このようなしくみを明治以来、築き上げてきたのである。

いいことずくめの公務員のようだが、このところ、人事院への職場の悩みの相談件数はかなり増えているという。
公表されていないが、いじめやセクハラを始めとして、人間関係にまつわる悩みがほどんどである。 また、自殺者の数も増えているのも見逃せないことである。
日本は、世界のなかで、経済、地球環境、紛争、人口問題など、かってないほど複雑で多様な問題を抱えている。
このような問題にとりくんで苦闘している官僚や官庁のことについて少しでも理解しておくことは必要なことである。

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