2010年2月6日土曜日

串田孫一 文房具52話

1996 時事通信社

1915~2005

著者は、歳を取るにつれて、外出する機会がどんどん減って、自分の部屋にいる時間が多くなった。
だが、その時間を有効に使っているかというとそうも言いにくい。
これまで単なる道具として気にもとめなかったような身の回りの文房具とのつきあい方が変わってきた。ひきだしや箱に入れておいたままになっている文房具を探しだして見ているうちに、それらについて書いてみたくなった。
それで、文房具の話が、52もあるのだが、著者の場合、とりわけ戦中・戦後の物が欠乏していたときの思い出に結びつきやすい。戦争中は、糊にも困った。誰でも思いつくのは、飯粒であるが、それもない時のほうが多かった。ヤマト糊は、著者が小学校の頃にもあり、青いガラスの容器にブリキの蓋がついていた。
ボールペンであるが、これは以外と古く、19世紀に発明された。
そのころは、使いにくいものであったが、その後、改良が加えられていった。
日本で使われだしたのは、戦後のことである。
私も、学生時代のボールペンにはろくな思い出がない。
やはり、書いているうちにインクが出なくなってしまったかと思うと、逆に書いているうちにインクの固まりができてきたりと、使いにくかった記憶がある。
その後も、さらに改良がすすみ、今ではボールペンまたはボールペンのようなものが筆記用具の主流になっている。
文房具というのは、昔から変わらないものも多く、子供のころの思い出にむすびつきやすいらしい。
昔から変わらない文房具の特徴は、人間が自分の手であつかう道具であるということである。
人間は、自分の手で道具を使うことによって世の中のあらゆるものを作り出してきた。
今でも、人が自分の手でなにかを作り出す喜びを感じるのは、かならず、なんらかの道具を通してである。

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