2009年12月8日火曜日

榊原英資 没落からの逆転

グローバル時代の差別化戦略

2008.6 中央公論新社

1941年生まれ

著者は、「日本は没落する」という本を出し、日本の社会や政治・経済に関する悲観的な見方を展開した。日本没落の徴候は、マスメディアの幼児化、経済界の拝金主義、政治のポピュリズム化に顕著にあらわれている。
しかし、こうした状況に絶望しているばかりではなく、いまこそ、危機感をバネに抜本的な改革をすべき時である。
明治維新以来の抜本的な改革に日本の将来がかかっているが、それではどのような日本を目指すべきであろうか。
日本の近代化とは、いいかえればイギリス化であった。戦後はアメリカ化に取って代わられた。
次の、ポスト近代の世界では、日本が目指すべきは、長い伝統ある日本への回帰でなければならない。本書では、日本とイギリスの歴史を比較しながら、日本の特徴は「和」であると主張する。日本は、「和」の精神で、権力が極端に集中する事を避け、長期間の平和を実現したのである。こうした著者の伝統回帰の考え方は、松岡正剛と山折哲雄の著作からインスピレーションを得て形成された。
著者は、伝統的な日本の良さを、世界に向けて発信すべきであるという。
考えてみると、今日の日本が置かれた閉塞状況は、明治維新以来の近代化の延長から生まれたものであることは間違いない。
だからといって、それ以前の社会を理想化した目で見るのもどうかと思う。
日本の歴史を「和」をキーコンセプトとして描くのは、ひとりよがりにすぎず、中国・韓国をはじめとするアジア諸国の理解も得られないであろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿