2009年12月1日火曜日

小林正宏 世界複合不況は終わらない

蔓延する楽観論への警告

2009.9 東洋経済新報社


1965年生まれ

「『世界複合不況』というタイトルには、二つの意味を込めている。一つは、金融市場内の構造、そして金融市場と実体経済の関係がかつてなく複雑化した時代に起こった不況であること。もう一つは、金融と経済のグローバル化がかつてなく進展した時代に、地理的に多くの国で同時多発的に不況に陥ったことである。」(「はじめに」より)

日本については、当初、金融面での影響は少ないように思われていたが、世界的な需要の減退により、外需に依存していた日本の景気は大きく落ち込んだ。それにともない、雇用が失われ、消費も伸びない。これで内需を拡大すべきと言っても、きわめて難しい。日本人はモノづくりに優れているから、その特性を生かすべきだという意見があるが、そもそも、モノが溢れているのに売れないから景気が悪いのが現状である。
アメリカのオバマ大統領は、将来の成長の柱は、自動車や鉄鋼などの製造業ではなく、「エネルギー、医療、教育」の分野であると位置づけている。日本においても、従来のように、輸出に依存するだけの経済をいつまでも持続することは難しい。
地球温暖化防止、医療用器具、介護補助ロボットの開発などの領域で製造業が伸びることが望ましい。
今の日本は、景気が悪いから自己防衛のために消費を抑制するのだが、個人の行動としては正しいとしても、それが国全体で見ると、経済全体が委縮し、いっそう厳しい環境となるというジレンマに陥っている。したがって、節約が美徳というのではなく、ある程度の所得のある人は、それなりの消費をしてもらわなければならない。皆が節約してバスを利用していたのでは、タクシー運転手の所得が減ってしまう。
民間企業が厳しくなるのにしたがい、公務員にたいする反感が高まり、「天下り」にたいする批判が強い。
日本の未来も、少子高齢化の進展で、国全体が衰退に向かっていると言う人が多い。
しかし、一定の法則に従い予見可能なのが自然現象であるが、人間は外部からの情報に基づき主体的に判断して行動する。日本の未来は、運命論的に決まるのではなく、将来の世代のためにどうしたいかによって決まると著者は言う。
後ろを振り返るのではなく「前向きに」考えるほうがいい。
「官か民」という発想ではなく、本当に必要な仕事かどうかが重要である。
公務員の仕事も、一種のサービス業と考えると、民間でやったほうがいいのか、それとも国あるいは地方自治体でやったほうがいいのかという話になる。

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