2009年11月28日土曜日

指南役 空気のトリセツ

2008 株式会社ポプラ社

「KY―空気・読めない」、渋谷の女子高生の間で2006年頃からはやりだしたことになっている。
かって、評論家の山本七平は、著書「空気の研究」のなかで、戦艦大和の出撃を決定したのは、会議での「空気」であったと書いた。無謀だとわかっていながら、会議の「空気」が大和を出撃させた。空気の前では、人間の理性は無力である。
最近では、「郵政民営化」という国全体に吹き荒れた空気を見方につけて選挙に大勝した小泉元首相がいる。しかし、国民が選挙のたびに空気に踊らされるとすれば大変危険なことである。
時代の空気のような巨大な空気に逆らうことはできない。だが、時間が経てば消えるのが空気の弱点である。ちょっとした一言や出来事で、空気がガラッと変わることもある。
駅の東口と西口、北口と南口で、まるで空気が違うことがよくある。人は人が集まるところに吸い寄せられる。駅前の空気も歩行者の数や時間に左右される。
会社の上司と直属の部下のように直接の利害関係にある者同士は、時間が経てば経つほど、それを取り巻く空気は悪化する。
田舎では、外出先で知人に会いやすい。都会では街で知人に合わないので、都会の空気のほうが心地よい。
維新の元勲たちは、薩摩や長州という勝ち組の空気のなかにいたからこそ、歴史に名を残すことができた。幕末の世に、彼ら以上に才能のある人間は、いくらでもいた。だが、雄藩という勝ち組の空気に乗れなかったのである。
人が集まると、いたるところ、空気ができる。人は、知らず知らず空気に動かされている。

0 件のコメント:

コメントを投稿