2009年10月30日金曜日

飯田泰之 考える技術としての統計学

2007 日本放送出版協会

1975年生まれ

最近流行の言葉で言うと、「情報リテラシー」とは情報処理の基礎技能であるが、そのうちでも最も伝統的なものが統計である。
「統計を使った嘘」には、いくつかの種類があるという。
たとえば、①グラフの縮尺替えなど「見せ方」による嘘
②データ選択の嘘(「飛行機事故は一度に死ぬ人数が多いので危険なように感じるが、年間の死亡者数は圧倒的に自動車事故のほうが多い」と、よく主張されていが、利用1億回あたりに直すと、飛行機のほうが自動車より死亡者数が多い。)
③データ収集の嘘(平日の昼間に電話で行われた世論調査は信用できるかといっ問題)
騙されないようになるために、統計を学ぶのだという主張もあるが、それよりデータを使って何ができるかを考えることのほうが重要である。
統計的思考法のひとつは「記述統計」と呼ばれ、集めたデータを観察しまとめることで物事の一般的な傾向を把握する。
もうひとつは「推測統計」で、ほんの一部のデータから全体を推計する。
「推測統計」は、世論調査に利用されており、1500~2000人程度の調査をすれば95%の確率で日本人全体の姿がわかる。
思考支援ツールとしての統計学の特質を考えてみよう。思考には二つの方法があり「演繹」と「帰納」と呼ばれている。
「演繹」とは普遍的な前提から個別現象の説明を得る思考法であり、「帰納」とは多数の個別現象から普遍的な法則性を得る思考法である。
演繹法の優れているところは、前提が正しければ結論はかならず正しいという性質であるが、裏を返せば、同じことを言い換えたにすぎず、思考によって新しいアイデアや発想が生まれてこない。
いっぽう帰納法のほうは、データから一般的な法則を類推するので、間違えることがある。
ここで、前例や経験にもとづき、確率的に高い予想をする統計的な発想法が役に立つ。統計学は、演繹法と帰納法を結びつけ検証するために、たいへん役に立つ思考支援ツールである。

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