2009年9月29日火曜日

橋本健二 居酒屋ほろ酔い考現学

2008 毎日新聞社

1959年生まれ 武蔵大学社会学部教授

「ある程度の時間、居酒屋で過ごしていると、いろいろと客たちの振る舞いが目に入ってくる。言葉も耳に入ってくる。それが時代によって、また店によって、大きく変わる。
だから四半世紀も居酒屋に通い続けていると、世の中の動きが見えてくる。居酒屋は、社会の鏡である。そう、居酒屋から日本が見えるのである。」(序より)

「いつの頃からであろうか。私は東京の居酒屋に異変を感じ始めていた。いまから考えるとそれは、日本が『格差社会』などと呼ばれるようになる数年前のことで、日本社会に起こりつつあった大きな変化の、前兆のようなものだったのだろう。」(p12)

「国内の製造業は衰退し、ブルーカラー労働者の職場の多くが失われた。増えるのは、低賃金の派遣労働者ばかりである。多くの自営業者が廃業し、わずかな年金で暮らしている。年金はどんどん目減りをし、外で飲む余裕のある人は少なくなっている。
その空白を、サラリーマンとOLが埋め始めたのである。」(p20)

かって「大衆酒場」という言葉があったが、今では、居酒屋で飲めるのは、比較的所得の高い人たちになってしまったらしい。かわりに増えてきたのが、格安で酒を飲ませる立ち飲み屋である。

「とりあえず、ビール」というのが、戦後長い間、酒宴の始まりを告げる合言葉であったが、ビールの消費量の低迷が止まらない。逆にシェアが増えているのがリキュール類と焼酎である。著者は、ビールは、経済的な格差がいまほど大きくはなく、日本人はみんな「中流」だとまでいわれた時代を象徴する酒だったと書いている。

「経済的な格差の拡大と貧困層の増加の中で、日本の居酒屋文化は崩壊の淵に立たされている。格差拡大を抑え、貧困層が生まれないようにするための対策とともに、居酒屋文化を守るための制度改革が必要だろう。多くの居酒屋経営者は、高齢化して後継者がいない状態にある。事態は急を要するのである。」(p256)

著者のいう「居酒屋文化を守るための制度改革」とは、たとえば、次のような税金に関わるものである。
酒税は従量税であるため、ビール大瓶にかけられている酒税は139円であるが、金持ちの飲む高級ワインでは60円である。庶民の飲むビールなどの税率を低く、高級ワインなどの税率を高くすることは検討されてもいい。
飲食店経営者には、酒類販売業免許が取得できないが、これを許可すれば居酒屋は卸売業者から直接安く仕入れることができるようになる。

京浜工業地帯と呼ばれていた東京から横浜にかけての地域だけ見ても、大きな工場は姿を消し、マンションが建つ住宅地に変わっている。
居酒屋というのは、一日の労働が終わった開放感から行くという意味では、半分は会社や工場の延長である。職場が無くなったり、働き方が変われば、大人数で行ってガヤガヤ騒ぐこともなくなる。たまに、飲みたい者同士、あるいは一人で行くよりないのである。

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