2009年8月6日木曜日

原田泰・大和総研 世界経済同時危機

グローバル不況の実態と行方
2009.2 日本経済新聞出版社


今回の金融危機について、著者は「アメリカが危機に陥ると、世界が危機に陥ってしまった。逆説的だが、アメリカ発の金融危機によって、世界はアメリカの力を思い知ることになった。ドルは基軸通貨であり続けるだろうし、アメリカが世界の基軸国であることは変わらない」(p7)「自由な人々の選択が、社会をより良いものにするというアメリカの夢は生きている。政権は交替し、責任者も変わる。チェンジは起こっている。失敗の原因を明らかにしてチェンジの起こせる社会が世界を導くという原則は変わらない」(p7)という。
そして、「アメリカ発の世界金融危機は、当然にアメリカ経済に打撃を与えている。・・・しかし、アメリカ政府、米連邦準備理事会の対応が迅速なことにより、不況は2009年には終わるだろう。回復の足取りは緩やかであるにしても、09年末にはプラス成長を確認できるだろう」(p98)としている。

日本については、サブプライムあるいはその他の証券にかんする直接の損失は、欧米にくらべて大きくないし、金融市場の混乱も少ない。にもかかわらず、日本への影響は欧米以上に大きいと予測されている。IMFの予測によれば日本の実質GDP成長率はアメリカ、ユーロ圏より低い。また、株価指数の下落率も主要国のなかで最も大きかった。

アメリカ発の金融危機の影響が日本での方が大きい理由の最大のものは、日本の輸出がアメリカに依存していることにある。アメリカに直接輸出しているばかりでなく、中国への輸出も、けっきょく最終需要のかなりの部分はアメリカの消費者が担っている。日本はアメリカの豊かな消費者向けの製品を提供してきた。輸出の主流は高級車、SUV(多目的スポーツ車)、大型テレビなど高付加価値製品である。これらの製品をつくっている輸出型の企業が国際優良株としてもてはやされてきたが不況による打撃も大きかった。
「しかし、だからといって、どうすればよかったのだろうか。日本の人口は減少し、一人当たりの所得もたいして増えない。将来のことを考えれば、海外の市場に依存するしかない。高い日本の賃金では安物をつくれないから高付加価値の商品に特化していた。・・・内需を増やせといっても、いまさら無駄な公共事業でもない。これしかない状況の中での戦略だったと言うしかない」(p212)

「日本の不況はアメリカの需要縮小によって起こった。・・・であればアメリカの需要縮小が収まるとともに日本の景気回復も進むだろう」(p227)

アメリカが基軸国である続けるであろうという理由は、ヨーロッパは、今回の危機でアメリカに負けないだけの不良資産をつくってしまった。しかも、その責任も明らかにされていない。また中国のように透明性と説明責任の問われない国には世界をリードする力はないと著者は言う。

けっきょくアメリカの需要は適切な政策により必ず回復するし、世界経済そして日本経済もアメリカに続くというのが著者の結論である。

今回の金融危機により、世界のどの国もグローバリゼーションの進展によって相互に依存しあっていることが明らかになった。そして、いまのところリーダーになれるのはアメリカしかない。

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