2009年8月5日水曜日

菊地正俊 お金の流れはここまで変わった!

2008.11 株式会社洋泉社

著者は、メリルリンチ日本証券 1986年東京大学農学部卒業

2008年は米国サブプライムローン問題をきっかけに、世界の株式市場は大暴落した。原油や穀物などの価格も史上最高値を更新した後に急落した。いっぽう、家計の所得が伸び悩んでいるのは中国などとの競争激化の影響が大きい。このように経済のグローバル化は、日本の地方で生活している人たちにもけっして無縁ではない。

最近値動きが大きかった原油、食品、株式、債券、不動産などの保有や取引状況を明らかにし、今後どのような投資が望ましいかを指南するのが本書の目的であるという。

株については、外国人投資家の日本株売買シェアは6~7割であり、日本株は外国人投資家の売買次第である。投資信託は、世界的な株価下落や円高によって、基準価格が下落したものが多い。しかし、現在のような混乱期に投資すれば将来報われる可能性は高いと著者は言う。ただ、証券会社の立場からの発言のようで、投資信託で大損した投資家はそれどころではないだろう。

「銀行や保険会社に預けられた資金はどこへ行くのか」では、郵政民営化後もゆうちょもかんぽも国債中心の資産構成である。銀行は貸付金が5割、国債は1割である。生保の運用のうち国債は2割である。
いっぽう2008年3月末で普通国債残高542兆円の所有者別内訳は、銀行等4割、生損保2割、公的年金1割、日本銀行1割、海外7%、家計5%などとなっている。

国の会計は一般会計以外に特別会計があり、特別会計の資産と負債の差額は「埋蔵金」と呼ばれ、その有無や規模が大きな政策論争になっている。埋蔵金論争の火付け役になったのが、東洋大の高橋教授である。

年金制度改革については、経済成長は想定を下回り、少子高齢化ペースは上回っているため、さらなる改革が求められている。2004年の年金制度改革で年金保険料は2017年までに段階的に引き上げられた後、固定化されることになっている。全国民共通の基礎年金(国民年金)の国庫負担割合は、現在3分の1である。2008年5月に社会保障国民会議は、基礎年金を全額税方式に移行した場合、2009年の消費税率は9.5~18%になるとの試算を発表した。麻生首相は、日本経済の景気回復後、消費税率を10%に引き上げて、基礎年金を全額税負担にするのが持論である。

不動産市場も株式同様、外国人投資家の影響度が増している。サブプライムローン問題が深刻化し、海外金融機関が日本向け不動産融資を絞ると、日本の新興不動産企業が相次いで倒産した。もっとも、姉歯耐震強度偽装事件をきっかけとした建築基準法改正によって住宅着工件数が大幅に落ち込んだことも景気の悪化に影響した。

人口が減少している日本では、外国人観光客の誘致と移民の解禁が課題である。2008年10月、政府は観光立国推進のために、観光庁を創設した。日本は移民を早く解禁しないと、世界的な人材獲得競争にも負けてしまう。いまでも優秀な中国人や韓国人は、皆欧米に留学している。

経済や金融のグローバル化の流れは変わらない。逆に言えば、いまこそ世界に飛躍するチャンスであると著者は書いている。

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