2009年7月22日水曜日

武藤敏郎・大和総研 米国発金融再編の衝撃

2009.4 日本経済新聞出版社

米国金融市場の混乱は、世界的金融危機に発展した。
本書は2008年9月のリーマン・ブラザーズの破綻から半年経過後に出版されただけあって、今回の金融危機の背景についてかなり整理されている。
また、今回の金融危機はいまだ終わったとは言えず、物語の途中にすぎないという。

ここでは、日本の金融機関への影響など、本書を参考に検討してみたい。
日本の金融機関は1990年代にバブル崩壊により、不良債権が100兆円程度にまで達した。その後、公的資金の注入などを経て金融危機の解消まで10年以上を要した。
日本の金融機関は、その過程で、合併・統合を繰り返しメガバンク化が進んだ。本書によれば、銀行が集約されただけでなく、金融サービスが標準化され画一化された。この結果、日本の銀行は広く浅い利益しか得られず、合併によって規模を拡大するしか道は残されていない。

欧米の金融機関とくらべて、当初、日本の銀行がサブプライム問題から直接受けたダメージは比較的小さいと言われていた。しかし、実体経済の急速な悪化による不良債権の増加、株式相場の急落による株式評価額の大幅な減少によって、日本の銀行も世界的な金融危機の影響を被った。さらに、景気の落ち込みが長期化すれば、銀行の収益も低迷する。

人口の減少と高齢化の影響で、日本経済の活力の低下と経済規模の縮小は避けられそうにない。過疎化が進む地方経済への影響は特に深刻になっていくとみられる。その結果、地方を基盤とする銀行への打撃は大きくなる。今後、地方銀行どうしの水平統合や都市銀行との垂直統合などが起こる可能性がかなり高い。メガバンクは、大企業やグローバル企業を相手にグローバルバンキング業務と証券業務を総合した専門性の高いサービスを提供して収益を拡大することができるかもしれない。いっぽう、多くの地方金融機関は収益の上がる投資先もあまり見つからず、苦しい経営を迫られそうである。

おりしも、新生銀行とあおぞら銀行が来年10月に合併することになった。両行ともバブル崩壊後に破綻し、一時国有化され、現在はアメリカの投資会社が大株主となっている。
両行とも、今回の金融危機の影響で巨額の損失を負ったのが、合併をうながした最大の理由であろう。
今後、金融庁の厳しい指導・監督のもとで、徹底したリストラによりコスト削減をはかることになるだろう。

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