2009年7月16日木曜日

森嶋通夫 なぜ日本は行き詰ったか(その2)

著者は付け加えておかねばならないこととして「外部からの影響」をあげ、次のように述べている。

p367

「私の没落論では、外部からの影響を全く無視しているということである。そのような外生的要因は自然的災害であり、もう一つは戦争のような人為的災害である。いまもし、アジアで戦争がおこり、アメリカがパックス・アメリカーナを維持するために日本の力を必要とする場合には、日本はおそらく動員に応じ活躍するであろう。日本経済は1945年以降戦争とともに栄えてきた経済であり、これはまた戦前もそうであった。没落しつつある時期には日本はおそらくなりふり構わず戦争に協力するであろう。朝鮮戦争やベトナム戦争がなかったならば、日本はあのような短期間にあのような高成果を実現し得なかったことはほどんど確実である。予想される日本の没落は、日本での政治哲学の欠如から日本の行くべき道を見失ったことによるのであるから、アメリカの背後につき従って指示どうりに動けばよい時代が来れば、そういう時代はまさに『日本の時代』になる。日本が昔の活力を取り戻すことは十分ありうる。この場合には、本章で述べた全てのことにもかかわらず、没落は悪夢に終わるであろう」

日本だけを考えれば、少子高齢化が進む日本の将来は、生活水準は高いが、活力がなく、国際的にも重要でない国というイメージを持つこともできる。しかし、これはむしろ悪いことではない。著者のいう「外部からの影響」は、無視できなくなりつつある。

中国は絶え間なく軍備を増強している。中国の世論は反日感情が強く、ことあるごとに反日デモを起こしている。

北朝鮮は、核兵器を持っている。ミサイルの発射実験を行っており、現在でも危険な国であるが、もし現政権が崩壊したとするとどのような混乱が朝鮮半島に起こるか予想できない。

日本でも、2007年、防衛庁が防衛省に昇格し、軍事力は確実に強化されている。インド洋での海上自衛隊によるアメリカ艦艇への給油支援は自衛隊の海外派遣を容易にしている。北朝鮮のミサイル発射に際しては、迎撃ミサイルが配置された。中国の軍備増強や北朝鮮の脅威に対して、日本の世論や政治はどのように反応するだろうか。
危機感が高まれば、ナショナリズムが高揚し、新たに大きな国家的目標ができる可能性がある。

21世紀のアジアの強国は中国とインドになると簡単に言っているだけではすまないようである。

0 件のコメント:

コメントを投稿