2009年7月2日木曜日

大竹慎一 世界恐慌 序曲

2008年11月 株式会社ビジネス社

著者自らの略歴では、日米欧で25年以上、第一線で活躍する辣腕ファンドマネジャーである。自分のことを、元全共闘でトロツキストのファンドマネジャーであるという。日本のトロツキストは「宇野理論」に強く影響されているところがあるという。団塊世代には、いずれにせよ昔懐かしい言葉である。宇野の「恐慌論」は、現代の金融恐慌解明のためにも必読文献であり、著者の恐慌予測が当たるのもこれに従っているからであるという。著者は宇野理論から近代経済学、そしてマネタリズムへと移っていった。さらに、マックス・ウェーバーがある。「大竹理論」の三本足は宇野理論とマネタリズムとウェーバーである。

著者は、これまで訪問した会社はのべ1000社を超え、徹底した現場主義で独自の調査を行っているそうである。以上のような背景を持った人に訪問され質問される会社の担当者または社長の心中はどのようなものだろうか。 しっかりした歴史観を持っているというのが著者の言いたいことだろうか。

このたびのサブプライム問題と金融危機の原因であるが、著者は諸悪の根源は日銀にあるとしている。つまり、日銀が長期間続けた超低金利政策が、内需をふくらませるかわりにアメリカの投資銀行やヘッジファンドの資金運用に使われてしまったのである。この、いわゆる「円キャリートレード」については、その破たんが世界的な株式市場の暴落と円急騰とを引き起こすであろうことは納得できる。ただ、日銀がはたして利上げできたであろうか。

著者は中国やインドも問題がありすぎて危ないという。

少子高齢化時代の日本も年金や介護の制度を維持できるかどうか危うい。著者によれば、「夫婦が6人の子どもを産むか、1億人の移民を受け入れるか、消費税を28%以上にして、そこから社会保険分を拠出するか、このどれかにする以外に、これから老人が年金をもらい、介護を受けることはできない。」

それでは、日本はこれからどこへ行けるのか?著者自身も明確な答えをもっているわけではなく、疑問符で終わっている。

「日本がグローバリゼーションに蹂躙され、廃墟になる前に、わたしは、ささやかな現実を示しておきたい。ひとつは、農業を取り戻し、畑を耕す、ということだ」
著者は自宅の庭の10坪くらいのスペースを耕して、有機栽培で野菜を作っている。

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