2009年7月1日水曜日

リチャード・クー 日本経済を襲う二つの波

2008年6月 株式会社徳間書店

1954年生まれ 野村総合研究所のエコノミスト

以下は、印象に残った部分である。

「日本経済を襲う二つの波」とは?ひとつは戦後最悪の金融危機と言われるサブプライム問題と日本の不況について。もう一つは日本の内需の低迷や格差の拡大に代表されるグローバリゼーションである。

まず、サブプライム問題については、2008年6月の時期での著者の分析・予想とも妥当なものである。著者は銀行への資本投入が必要と書いているが、その後、事態はそのとおりになった。

グローバリゼーションについては、日本は戦後、欧米を追い越すことばかりを考えて走ってきた。ところが、この数年は中国やアジアの他の諸国から追撃される立場になった。日本人は、この追う立場から追われる立場になったことの意味を充分理解しているとは思えない。
グローバリゼーションへの対応は日本にも大きな変革を迫っている。

日本のバルブ崩壊後の長引く不況を著者は「バランスシート不況」と説明している。日本企業は資産価格が暴落したにもかかわらず、借金が残り、債務超過になった。債務超過を解消しようとした日本企業は、いっせいに借金返済に走った。そのため、いくら金利が安くても借り手がいなくなってしまい、景気はスパイラル的に悪化する。これが、日本経済が過去15年間直面したデフレ圧力の正体である。著者によれば、今の日本は「バランスシート不況」の最終局面にある。それにもかかわらず、なかなか内需が伸びない。著者は、その背景にグローバリゼーションの影響があるのではないかと見ている。

「第5章 日本に襲いかかるグローバリゼーションの大波」で著者は、日本にとってのグローバリゼーションとは「中国の台頭」のことと述べている。著者によれば、日本は過去20年間、中国に対しては貿易赤字を出しているにもかかわらず、中国で生産しているのが日本のメーカーであることも原因で中国の輸出攻勢に気づいていない。

グローバリゼーションの波に乗れる大企業は、すさまじい勢いで中国に進出して、大きな業績をあげている。一方、零細・中小企業は、グローバル展開できないどころか、中国製の低価格品と競争しなければならない。グローバル化に対応できない零細・中小企業は収益や受注が減少していく。

日本の場合、グローバリゼーションに乗れて儲かっている大企業のほどんどが東京に集まっている。政策決定者やマスコミ関係者まで世論形成に関係する人も東京在住である。東京だけ見ると極めて景気が良いように見えるが、地方は極めて景気が悪い。「中小企業・零細企業・地方」の部分が日本でいちばん空洞化がすすんでいる。
将来を悲観的に見ている国民のほうが、楽観的に見ている国民よりずっと多くなっている。

では、グローバリゼーションを生き抜くには何が必要か。いま日本に必要なのは、たえず先進的なことを創造できる人材を育てることである。追い上げてくる相手を振り切るため、革新的な技術や製品を可能にする真の構造改革が迫られている。

「地方を見捨てた自民党、地方に食い込む民主党」では

小泉首相が郵政民営化選挙のさい、民営化反対の地元議員を小泉チルドレンに置き換えるという荒業にでた。これを地方から見れば、地方のために頑張っている小泉チルドレンはどれほどいたのかという割り切れない気持ちを残すことになった。そうした鬱屈した地方に手を差し伸べたのが小沢・民主党である、それが前回の参議院選挙での民主党の大勝につながった。政治的嗅覚のするどい小沢氏は、地方の保守層のなかに大きな不満がたまっていることに気づいたのである。小沢党首は地方の声を吸い上げ、自民党の支持者を取り込んでいった。小沢氏は民主党を自民党の右にもっていった。民主党が保守に変質したことによって、自民党はいま本当に存亡の危機を迎えている。日本の政治基盤全体が流動的になっている。

私も東京近辺のことしか知らないので地方の状態がどのようであるか実感がないのであるが、たまに地方都市の商店街へ行くと、たしかに閑散としている。

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