2009年6月22日月曜日

水谷研治 日本経済・絶望の先にある希望

水谷研治 日本経済・絶望の先にある希望
「大デフレ」「悪性インフレ」を超えて
2009.4 PHP研究所

著者は1933年生まれ 東海銀行のエコノミストとしてかっては、メディアによく出ていた。

題名にあるように、著者によれば日本経済の未来は暗い。政府の膨大な財政赤字が40年以上も続いているために、それが極めて異常であることの認識が国民にはまったくない。このように極端な赤字を続けることはできない。赤字によって押し上げられてきた経済は正常な水準へ大きく下落する。大増税と経済水準の大幅な引き下げは不可避である。財政改革を実行すれば、景気は急落して大デフレになる。しかし、その後、日本経済はあくぬけして再生する可能性があると著者は言う。

いっぽう、景気の悪化を嫌って改革を先送りすれば、将来予想されることは悪性インフレと国家経済の破たんである。内国債残高は680兆円、これに対して租税収入は年に46兆円である。これは国の財政は夕張市よりはるかに悪いということである。著者は日本経済の将来について悶々たる思いを抱いているという。

日本経済は戦後一貫して経済成長を続けてきた。将来のことを予想することは難しい。そこで、このままの流れが続くかのように考えがちである。しかし、実は、その保証はない。経済が成長しなくなったからである。このままでは、明るい将来の展望は開けそうにない。アメリカの膨大な貿易赤字によって、日本経済は押し上げられてきた。そのアメリカも、もはやかってのような強大な国ではなくなってきた。

著者は、現在のような事態をまねいたのは国民が目先の利益を優先した結果であるとしている。景気が悪くなると、政府の責任であるとして、つねに政府は景気対策をすべきだとの世論が作られる。政治家は国民の意思に従わざるを得ない。しかし、いつまでも景気対策を続けることはできない。財政改革のためには、大増税は必然である。著者の見方はかなり厳しく、現在の国民は生活を切り詰めて将来の国民の負担を削減するべきだという。

以上の話はまったく嬉しくはないが、ただちに反論することも難しいと思う。大いにあり得るシナリオであることは事実である。また他方では、現在の世論として大増税も受け入れられないではないだろうか。

けっきょく重苦しい読後感が残る。

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